あなたは覚えていますか?
中学生の頃、高額な楽器を買えば自動的に「何者か」になれると信じていた、あの痛々しい自意識を。
今日紹介するのは、そんな古傷を容赦なくえぐりつつ、最後には最高のカタルシスで包み込んでくれる傑作「ふつうの軽音部」です。
これは、我々と同じ「陰の者」が地べたを這いずり回りながら光を目指す、魂のドキュメンタリーなのです。
「ふつうの軽音部」1巻はどんな話か?
「高校生になったら軽音部に入って、ちやほやされたい」
そんな邪な動機と、自意識過剰な脳内ペット(自意識アニマル)を飼う主人公・鳩野ちひろ。
彼女は中学3年間で貯めたお年玉の残りと母への借金を全ツッパしてフェンダーのテレキャスターを購入し、バラ色の高校生活を夢見ます。
しかし、現実は甘くない。
入部希望者はまさかの45人、楽器未経験者の大量発生。
そして「バンド内恋愛からの解散」という軽音部あるあるの洗礼。
イケメン気取りの男子・ヨンス、陽キャ女子・桃、そしてミステリアスな長身ベーシスト・厘。
個性豊かな面々に振り回されながら、鳩野は「ふつう」の高校生活がいかに難しいかを知り、それでもギターをかき鳴らす喜びを見出していきます。
【感想】心が震える!見どころ3選
「共感性羞恥」で死にそうになるリアルな人間模様
この作品、何がすごいって「いるいる、こういう奴!」の解像度が異常に高いんです。
特に、鳩野が最初に組むバンドメンバーの男子「ヨンス(田端陽一)」を見てください。
「大阪のうまいメシなら俺に聞いて(笑)」
この自己紹介カードに書かれたこの一文の殺傷能力。
サチモスやKing Gnuを愛聴し、ちょっと音楽通ぶっているけれど、実際はバンドを自分の踏み台としか思っていないように見えるあの感じ。
ヨンスが鳩野たちを置いて、LINE一本でバンドを解散させるシーン。
「ごめんなさい🙇♂️俺国公立目指してるし勉強に集中したいから部活辞めることにしました😅一回ぐらいライブしてみたかってんけどな~😎今までありがと!」
このテキストの軽さ!見ていて胃が痛くなる。
読者の共感性羞恥を刺激し、絶妙にイライラさせてくれる名脇役っぷりです。
腹立つような、憎めないような。そんな絶妙なキャラです。
鳩野ちひろの「歌」が覚醒する瞬間
普段は少し卑屈で、心の中のツッコミが止まらない鳩野ですが、彼女には隠された武器がありました。
それは、好きなバンド曲を歌うときの爆発力です。
忘れたスマホを取りに視聴覚室に戻りますが、そこでは翌日のライブの準備として、セットが用意されています。
そして、一人きりということもあり変なスイッチが入ってしまい、ギターを持ってマイクの前に立ちます。
すべてはここから始まりました。
観客がいないステージでギターを持ち熱唱する鳩野。
辛かった過去、観客の前で歌うイメージが流れ、まるで本番のステージさながらの熱いシーン。こちらの胸まで熱くさせられます。
そしてなんと、歌っている途中目の前に厘がいることに気付く鳩野。完全にバレていました。
恥ずかしさで真っ赤になる鳩野。
一人の才能の芽吹きを目の当たりにし、衝撃で立ち尽くす厘。
この日、鳩野ちひろの運命は大きく変わり始めたのです。
ベーシスト・幸山厘という「光(?)」
バンド解散で落ち込む鳩野の前に現れた救世主、それが3組の幸山厘(こうやま りん)ちゃんです。
黒髪ロング、クールな見た目、そしてベース担当。
完璧ですね。
桃と、ヨンスに捨てられた鳩野を新バンドに勧誘する彼女。
一見すると打算的でミステリアスですが、彼女は誰よりも周囲をよく見ています。
鳩野の歌声にといちはやく「神」の可能性を見出し、プロデューサー的な視点でバンドを組み立てようとする知性。
「すべては神……はとちゃんのため」「はとちゃんに導かれた」など、謎発言の多い彼女です。
【ネタバレ注意】結末と考察:この後の展開はどうなる?
1巻のラストでは、桃(ドラム)も含めた3人で新バンドを結成しようという流れ。
いよいよ本格的な活動が始まろうとします。
「見返してやりたい」という負のエネルギーは、上達において最強のガソリンです。
ただ、この作品タイトルは「ふつうの軽音部」。
トントン拍子にはいかないはず。
「ギターが上達しない」「オリジナル曲が作れない」「進路どうする」といった、地味で痛い壁に何度もぶつかる未来が見えます。
でも、それが青春ですよね。
まとめ:「ふつうの軽音部」はこんな人におすすめ
- 邦ロック(特に00年代〜)が好きで、歌詞に救われたことがある人
- 学校の「スクールカースト」や人間関係の空気に息苦しさを感じたことがある人
- キラキラしたサクセスストーリーよりも、泥臭い成長譚を愛する人
ギターを買った日の「無敵感」と、翌日の「絶望感」。
その落差を知っている陰の者なら、間違いなく神のファンになります。
ぜひ「ふつうの軽音部」を手に取り、神の絶唱を見届けてください。
「はとちゃんの歌聴けば全部わかるから!!」
※本記事は、本ブログ管理人が作品を読んだ個人的な感想・考察です。
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(c) クワハリ・出内テツオ / 集英社

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