今作「あさやけリフレイン」はエモい・尊い・可愛いの3拍子が揃った尊み作品です。
一人でパソコンに向かい、自分好みの音楽を作っていた夜。
主人公のその孤独が、たった一つの「通知」によって朝焼けのような鮮烈な光に変わる瞬間。
今回はまつだひかり先生が描く音と感情が交錯する「あさやけリフレイン」1巻について語らせていただきます。
多少早口になるかもしれませんが、あしからずご了承ください。
あさやけリフレイン:どんな内容?
ひとことで言えば「孤独なクリエイターが自分を肯定してくれる最強のファンと出会い世界とチューニングを合わせていく物語」です。
主人公の河下心(活動名:shin)は学校では内向的で目立たない存在ですが、家ではDTM(デスクトップミュージック)で独自の音楽を作り出しネットの海に放流している女子高生。
ある日彼女の元にひとつの通知が届きます。
それは登録者数19万人越えの人気VTuber「九六衣カコ」からのフォロー通知でした。
そのカコの中身である少女・リクは以前からshinの作る音楽の強火ファンだったのです。
そして、カコをイメージした曲を制作するshin。それを受け、泣きましたとSNSで投稿するカコ。
そして、音楽イベントでの対面、バンドに誘われるshin。
二人の距離は物理的にも精神的にも縮まっていき、やがて伝説のフェス「ASAYAKE ROCK FESTIVAL」を目指すバンド結成へと至ります。
心が震える:見どころ3選
感情がほとばしる「音合わせ」の瞬間
印象的なのは、主人公・心が初めて他者と音を合わせその快感に全身を貫かれるシーンです。
普段は言葉少なで内向的な彼女。
しかしスタジオでの初セッションを終え家に帰ってベッドに寝転がった瞬間彼女の感情は爆発します。
「すっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっごく楽しかった…!!」
胸いっぱいに溢れ出すこのモノローグ。
単なる「楽しかった」という言葉では片付けられない細胞の一つ一つが歓喜しているような描写です。
「DTMは自分の性格に合っている」と感じていた彼女が誰かと音を重ねる喜びに気づいてしまった不可逆の瞬間。
「…うぅー…楽しいー…」とつぶやくコマに感情移入する方は多いはずです。
「恋」という言葉の殺傷能力:百合読み不可避な展開
この作品を単なる爽やかな青春バンド漫画だと思って読むと、思わぬ方向から心臓を撃ち抜かれます。
物語中盤、shinの楽曲のギターアレンジ動画をアップしていた「kai」さんのギターの腕に感銘を受けた心は、連絡が欲しいとkaiさんの演奏動画にコメントし、その後にkaiさんから一通のメールが届きます。
動画投稿の許諾を求める丁寧な文面のなかに、とんでもない一文が混ざっていました。
「shin様の音楽に触れたのは恥ずかしながら(中略)聴いた瞬間、心を持っていかれました」
「この気持ちは恋に近いと思います」
……こ、恋!?!?
音楽的なリスペクトの最上級表現としての「恋」。
しかも文脈が非常に礼儀正しく堅い文章の中で唐突に吐露されるこの感情。
主人公の心も動揺を隠せません。
「いやっ……”恋“は…そういうたとえ…だよな…!!」
動揺する彼女が赤面して見えるのは私の気のせいではありません。
これは「音楽の才能への恋」なのか「その音を紡ぎ出す人間への恋」なのか。
顔も見ぬ相手にここまでの言葉を送ってしまうkaiさん(本名:木瀬 海)の重さ、好きです。
三者三様のベクトルが交錯する:スタジオの空気感
そして1巻の後半、そのkaiさんがついに合流します。
黒髪ロング、切れ長の目、クールな佇まい。
まさに「仕事のできる美人ベーシスト(※ギターです)」といった風貌の海さん。
彼女の加入によりバンド内の関係図がさらに味わい深いものになります。
- shinの音楽に憧れ太陽のようにバンドへ引き入れたリク
- shinの音楽を崇拝し「恋に近い」感情で支える実力派の海
- 二人の感情の交差点に立ち戸惑いながらも音を紡ぐ心
この構図、完璧すぎませんか?
特にリクと海が初めて顔を合わせるシーンでのやりとり。
お互いの裏に潜むかもしれない、心(shin)を巡る微細な独占欲や対抗心の幻覚が見えてきそうです。
そこにマイペースな一夏さんのドラムが加わることで絶妙なバランスが保たれているのがまた良い。
やはり、まつだひかり先生の描く女の子と楽器の組み合わせは「約束された勝利」の構図と言えるでしょう。
この後の展開はどうなる?
1巻のラストはメンバー4人の意識が「ASAYAKE ROCK FESTIVAL」という一つの目標に向かって収束していく希望に満ちた場面で終わります。
しかしここからが試練の始まりではないでしょうか。
shinとkaiというクリエイター気質の強い二人とエンターテイナーとしての華を持つリク。
音楽的な方向性の違いや感情のすれ違いが、今後の楽曲制作過程で露見する可能性があると勝手に心配しています。
私たち杞憂民は、尊い空間が壊れることを何より恐れるのです。
特に「私のほうがshinさんの音楽を理解している」マウント合戦が起きようものなら、我々あさやけリフレイン読者の心拍数は上がりっぱなしになるでしょう。
とはいえ今は純粋に4人が音を鳴らす喜びに浸っていたい。
そう思わせるほど1巻の読後感は爽やかでまさにタイトルの通り美しい朝焼けを見ているような心地よさがあります。
まとめ:あさやけリフレインはこんな人におすすめ
- DTMやバンド経験があり創作の苦しみと喜びを知っている人
- 女子同士の微細な心の揺れ動き(尊み)を摂取したい人
- まつだひかり先生の描く楽器を持つ女の子の可愛さに悶えたい人
これから始まる彼女たちの青春は間違いなく我々の日常を彩る最高のサウンドトラックになるはずです。
まだお読みになっていない方は、ぜひ彼女たちのファーストセッションを目撃してください。
※本記事は、本ブログ管理人が作品を読んだ個人的な感想・考察です。
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(c) まつだひかり・講談社

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